50代・60代の方々の中には、これまでに国民年金の保険料を納付していない期間がある方もいるかもしれません。
未納期間がある場合、将来にどのような影響があるのか、心配される方も多いでしょう。
実は、国民年金の未納を放置してしまうと、大きなデメリットが待っています。最悪の場合、年金を一切受け取れなくなることや、財産が差し押さえられる可能性さえあります。
本記事では、国民年金の未納による影響と、その対策について詳しく解説していきます。
国民年金未納者の数
厚生労働省が発表したデータによると、令和5年度には国民年金の未納者は約79万人でした。
みんながしっかり保険料を払っているからこそ、年金制度が成り立っているわけですが、未納が多くなると、このバランスが崩れてしまい、多くの人に影響が及んでしますのです。
実は、国民年金の未納者数はここ数年で大幅に減少しています。
ここで言う年金未納者とは、国民年金第一号保険者の中で、24ヶ月保険料が未納の方が対象です。
令和元年では、国民年金の未納者数は約125万人でした。
更にそこから、年を追うごとにつれ、115万人、106万人と減少。
さらに、令和5年には79万人にまで減少しました。
近年では減少傾向が続いていますが、国民年金とは日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する義務であり、保険料を納付することが求められています。
それにもかかわらず、79万人が未納状態なのです。
令和5年度の国民年金保険料の最終納付率は83.1%と、およそ17%の人には未納期間があるということが分かっています。
国民年金の未納とは、法律で定められた国民年金保険料を期限内に支払わない状態を指します。
未納期間が長いほど老齢基礎年金の受給額は少なくなってしまいます。
老後が身近になってくる50代、60代の方々にとって、この問題は看過できません。
年金を未納にしてしまう理由には、
- 経済的困難
- 年金制度への理解不足
- 制度の複雑な仕組み
- 制度への不信感
など、様々な理由が挙げられます。
国民年金が未納だとどうなるのか?
国民年金の未納は、想像以上に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
まず、最も最悪のパターンとして、年金を全く受け取れなくなる可能性があります。
実は、国民年金を受給するためには、最低10年間の加入期間が必要です。これを「受給資格期間」と呼びます。
例えば、20歳から60歳までの40年間のうち、30年以上未納が続いてしまうと、この受給資格期間を満たせず、年金を一切受け取れなくなってしまいます。
「まさか自分が…」と思われるかもしれませんが、実際にこのようなケースは少なくありません。特に、自営業者の方や、転職を繰り返した方などは要注意です。
さすがに30年以上未納、という方はそこまで多くないかもしれませんが、数年の未納も将来の年金額に大きな影響を与えます。
20歳から60歳までのすべての人に加入が義務付けられている国民年金は、40年間未納なく支払うと月額6万6250円、年額で79万5000円となります。(2023年4月時点・67歳以下)
この金額は、1年間未納があると、受給の時に年間約2万円の減額になると言われています。
会社勤めの方で厚生年金に加入していれば、国民年金にも同時に加入しており、給料からの天引きで未納はないと思われている方もいるかも知れません。
しかし、実際には学生時代や任意加入だった時代に国民年金が数年に渡り未納状態だったというケースも多く見られます。
仮に5年間、国民年金の未納期間があった場合、年間約10万円の受給額減となります。
これが10年、20年と続けばその金額は数百万単位です。
このように、未納期間がある場合、将来受け取る年金額が大幅に減少してしまうのです。
50代、60代の方々にとっては、この影響は非常に大きいと言えるでしょう。
さらに、未納の影響は老齢基礎年金だけではありません。障害基礎年金や遺族基礎年金にも大きく影響します。
例えば、不慮の事故や病気で障害を負った場合、障害基礎年金を受け取ることができます。しかし、これには条件があります。
障害の原因となった病気や怪我で初めて医師の診療を受けた時点で、直近の1年間に保険料の未納がないことが求められるのです。
「まさか自分が…」と思っていても、いつ何が起こるかわかりません。
未納を続けていると、いざという時に障害基礎年金を受け取れない可能性があるのです。
また、遺族基礎年金についても同様です。
加入者が亡くなった場合、その遺族が受け取れる年金ですが、これも保険料の納付状況によって受給できるかどうかが決まります。
そしてもう一つ、未納による大きなリスクがあります。
それは、未納のまま放置することによる、財産の差し押さえの可能性です。
未納期間がある方にはまず、督促状が送られてきます。
これを無視すると、次は強制徴収の対象となる可能性があります。最悪の場合、財産の差し押さえにまで発展することもあるのです。
さらに、延滞金も発生します。
これは、本来納付すべき期限から納付の日までの期間に応じて課されるもので、利息のようなものです。
つまり、放置すればするほど、支払うべき金額が増えていくのです。
もし、これまで未納期間がある方は、この内容を聞いて不安に感じた方もいるかもしれません。
確かに、年金は将来の生活を支える重要な部分ですが、未納期間があったとしても、心配しないでください。
適切な対策を取ることで、その影響を軽減することができます。
未納期間がある場合の解決方法
未納期間がある場合の解決方法は主に、
- 追納制度
- 任意加入制度
- 老齢厚生年金
の3つが挙げられます。
一つずつ解説していきます。
追納制度を活用する
これは、過去の未納期間の保険料を後から納付できる制度です。
追納することで、将来受け取る年金額を増やせるということです。
通常、追納できるのは過去2年間分までですが、特別な事情がある場合には、最大で10年分までさかのぼって支払うことも可能です。
追納制度を利用する場合、保険料が免除だったのか、猶予だったのか、未納だったのかによって手続きが少し異なります。
それぞれのケースを見ていきましょう。
免除制度を利用していた場合、保険料の全額または一部が免除されていた期間の保険料を後から納付することができます。
ただし、追納できるのは免除を受けた期間から10年以内です。
例えば、2014年に免除を受けた保険料は、2024年までなら追納可能です。
続いて、納付猶予制度を利用していた場合、納付猶予を受けた期間の保険料も、10年以内なら追納可能です。
「学生時代、年金のことなんて考えもしなかった」という方も多いかもしれません。
学生時代は収入が少ないため、年金保険料の支払いが難しかったこともあったでしょう。
でも、もしかしたら学生の間は「学生納付特例制度」を利用して、保険料の支払いが猶予されていた可能性があります。
この猶予された期間も、追納することで年金額を増やすことができるんです。
単純に未納だった場合は、納付期限から2年以内であれば通常の保険料として納付できます。
2年を過ぎると延滞金が加算されますが、追納は可能です。
任意加入制度を活用する
これは、通常60歳で終了する国民年金の加入期間を延長できる制度です。
任意加入制度は、
- 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方
- 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方
- 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満の方
- 厚生年金保険や共済組合等に加入していない方
が加入できます。
さらに、「年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の方」「外国に居住する日本人で20歳以上65歳未満の方」も任意加入が可能です。
この制度を利用すると、60歳を過ぎてからでも国民年金に加入し、保険料を納付することで将来の年金額を増やすことができます。
特に、40年の納付期間に足りない方にとっては、大変有効な方法ですね。
60代以降も働き老齢厚生年金を収める
最後に紹介するのは、60歳以降も働き続けるという方法です。
これは直接的な未納解消策ではありませんが、年金額を増やす効果があります。
60歳以降も再雇用や延長雇用、あるいは再就職で働き続け、老齢厚生年金を収めることで60歳を超えて働いた分も公的年金に反映されます。
この老齢厚生年金は保険料の払い込みが70歳まで可能なため、60歳以降の収入に応じて年金を増やせるのです。
具体的には、 定年退職後に同じ企業やその関連会社で再び雇用契約を結ぶ「再雇用」、
定年を迎えても退職扱いにはせず、そのまま雇用を続ける「延長雇用」があります。
または、新しい企業に就職する「再就職」という方法もありますね。
これらの方法を組み合わせることで、未納期間を埋めつつ、将来の年金額を増やすことができます。